PRESIDENT理事長紹介

理事長 齊藤 隆幸理事長 齊藤 隆幸

限界突破 ― 新たな時代へ、心ひとつに

理事長
齊藤 隆幸

はじめに

戦後、焼け野原の中、日本の青年会議所活動は1949年、1人の青年によって始まりました。戦争の爪痕が、深く残るまちの景色は、悲惨なものだったに違いありません。建物は倒壊し、人々は下を向き、未来に明るい希望を抱けずにいました。その焼け野原を前に、「何とかこのまちを蘇らせたい。人々の笑顔を取り戻したい」と心に誓った、その想いこそ青年会議所の理念そのものです。
2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)により、世界は未曽有の事態に陥りました。誰もが想像しえなかった「あたりまえがあたりまえにできなくなる世界」。人と人が、近距離で接触ができない世の中では、経済活動は低迷し、まち全体に閉塞感を作り出しました。私たち青年会議所活動も例外ではなく、多くの影響を受けました。しかしながら、私たちJAYCEEが歩みを止めることはありません。少しでもまちを良くするために、みんなが日々笑いあえるように、時代の移り変わりとともに、様々な手段を講じながら、社会の抱える課題をしっかりと見通し、その課題を解決することで「明るい豊かな社会」を実現する。青年会議所の理念は、いささかも揺らぐことはないからです。
これまでの常識や、日常が瓦解したこんなときだからこそ、メンバー全員手を携え、心をひとつに、目の前の課題に向かって、挑戦していきましょう。これからはじまる、新たな時代の浜松青年会議所を、創り上げるのは私たちなのです。

こんな時代だからこそ
できることはないのか

ソーシャルディスタンス(社会的距離)という言葉が盛んに叫ばれ、人と人の接触が大きく制限されるようになって以降、社会活動は、あらゆる局面で、方針転換を余儀なくされました。会社では、対面の会議や面談が憚られ、スポーツや芸術活動では、集客することもままならない。仲間同士、連れだっての食事ですら、自粛せざるをえない。そうした状況下で人々は、他者と交われない喪失感や閉塞感を募らせます。
一方で、今まで思いもよらなかった、あるいは思ってはいても、なかなか実現に移せなかった、別の手法への可能性や、新たな価値観に気づかされることも多いのが、このコロナ禍ではなかったかと思うのです。例えば、スマートフォンに代表される通信技術が、日進月歩の勢いで発達したことで、遠く離れた人と、画面越しにリアルタイムで会話をすることも、今では当たり前となりました。物理的な距離と、時間を物ともしないで、取ることのできるコミュニケーションがもたらした恩恵が、多岐にわたることは想像に難くありません。これは、どちらが良いとか、悪いとかではありません。直に会うことで得られる感情と、遠隔で交流する利便性は、天秤に掛けるものではなく、どちらも状況を鑑みながら、採ることのできる選択肢の一つだということです。
このように、立ち止まったことで、気づく価値があります。それは、立ち止まらなければ、気づくことができなかった価値なのかもしれません。私たちが今やるべきことは、失ったものを嘆くことではなく、様々な観点から、新たな価値を見出すことではないでしょうか。新たな価値は、さらに新たな価値へと繋がり、これまで以上に、まちやひとに豊かさをもたらすことに繋がるのです。

新たな時代を生きていく
子どもたちのために

どんな時代、どんな状況下においても、子どもに成長の機会は平等にあるべきです。浜松青年会議所は、長年にわたり、子どもたちの未来を見据えた、青少年育成事業を行ってきました。本年度は、昨年度と同様に、コロナウィルスの影響を鑑みて、「はままつ少年の船」は出航せず、新たな青少年育成事業を展開していきます。制限された環境の中でも、子どもたちは日々、勉学に励み、友情を育み成長しています。どんな状況下に置かれても、柔軟に対応し、前向きに進んでいく姿には、私たち大人も見習うべき姿勢が多くあります。時に、子どもたちの存在が、大人の行動を促進し、社会に影響を与えている事実もあるのです。
子どもたちは、無限の可能性の中に夢を描きます。新たな時代を生きていく子どもたちが、夢を描き、前向きに進んでいくためには、成長する環境の中で、限界を感じさせてはいけないのです。新しい生活様式と、私たちが住み暮らす、この浜松の豊かな環境を掛け合わせることで、完成する青少年育成事業にはその力があるはずです。
新たな時代を生きていく子どもたちが、未来に希望を描き、無限の可能性を感じることができる環境の中で、成長していくことが重要なのです。

新たな時代の
事業モデル確立

2020年は、人と人が近距離で会話を楽しむ、テーブルを囲み、様々な話題と共に食事を楽しむ、そんなあたりまえが難しくなりました。ソーシャルディスタンスの確保をはじめとする、様々なウィルス対策が求められることにより、対面がスタンダードで開催されてきた、多くの例会や、例会と同時に行われてきた、懇親会の中止が相次ぎました。しかしながら、これからも、浜松青年会議所は毎年、対面をスタンダードで行われてきた事業を行っていく必要があります。
浜松青年会議所の、1年間の運動発信をするため行われてきた「新年賀詞交歓会」、そして、新たな仲間を迎え入れるために行われてきた「入会式」は、明確な目的達成の根拠として、対面で行ってきた事業です。それらの事業に、大胆にメスを入れ、新たなスタンダードを追究していきます。
人の想いは、直接生の声を聞くことで心に響くものですが、様々な映像技術を取り入れて、発信された想いにも、心を動かすことができると考えます。そして今は、画面越しの世界を眺めているだけではなく、画面越しの世界に入り込み、体感できる世界も存在します。多くの選択肢の中から、最善のツールを選択し、これから求められる、新しい時代の浜松青年会議所の、事業モデルを確立していきましょう。新たな時代のJC運動、その事業モデルを確立することは、様々な事業のモデルケースとなり、新たな可能性へと繋がっていくのです。

新時代を切り開く
リーダーとしての
自覚を持とう

課題解決こそがJC運動の原点です。近年は様々な課題がありながらも、普通に生活していたら見えにくい時代だったように感じます。それは物質的にも、感覚的にも満たされていて、日常生活を送るうえで、大きな障害がなかったからではないでしょうか。しかしながら、コロナウィルスはその根底を脅かす存在となり、日常生活に様々な課題を生み出しました。明確な課題が、目の前に現れたこんな事態だからこそ、JAYCEEの組織力と、地域のリーダーとしての行動力が試されるのです。
私たちが住み暮らす浜松には、まだまだ青年会議所の理念に共感する青年経済人がいるはずです。明確な課題を前に、「この状況を自分の手でなんとかしたい」と秘めた想いを燻ぶらせている仲間がいるはずです。新たな仲間と共に、浜松青年会議所の、新しい時代の運動を、より強固なものにしていきましょう。
世の中には、人の手にしかできないことがあります、多くの手が集まれば、自ずと大きな輪が形成され、様々な影響を伝播する力に変わっていきます。私たち浜松青年会議所メンバーが、時代を先導し、明るい未来へと繋げていきましょう。

新時代のネットワークと
ブランディングを
追究する

70年という長きにわたり、受け継がれてきた浜松青年会議所ですが、どこまで市民や企業に認知されているでしょうか。「その事業は知っているが、浜松青年会議所がやっていたとは知らなかった」という言葉を耳にしたことがあります。事業と浜松青年会議所が、リンクして市民に届いていれば、浜松青年会議所の、すべての事業に興味を持つことに繋がり、参加することに繋がります。私たちの運動を幅広く知ってもらうことが、事業目的達成に、何よりも重要なことなのです。また、情報が錯綜する現代において、他LOMや、様々な団体との交流は、浜松青年会議所の行うべき事業の指標になります。対外との協力体制を、より強固なものにし、交流を通じて、共感される運動に繋げていきます。
浜松青年会議所が展開する運動が、どんなに素晴らしくても、それだけで信頼される団体になれるわけではありません。公益法人として、財務面、コンプライアンス面での透明化を、担保しているからこそ、信頼に繋がるのです。公益社団法人として、公益会計基準に基づき、健全な運営を行っていきます。同時に、新たな時代の事業を、模索していく本年度は、費用対効果についても、新たな視点で追求することが必要になります。今までの常識にとらわれることなく、財務管理をしていきます。
新たな時代においても、共感と信頼の中で、運動を展開していかなければなりません。自己満足になることなく、大きな輪の中で、運動を展開していくことこそが、浜松青年会議所運動の、求心力へ繋がっていくのです。

盤石な運営が
組織としての
信用に繋がる

青年会議所活動の根底は会議です。新たな時代の事業を、成功化に導くためには、今まで以上に、質の高い会議運営が重要となります。メンバーが行う、日々の様々な会議を、「新しい生活様式」の元に、整備していきます。
そして、私たちが、「心をひとつに」運動を展開していくために重要なことは、メンバー同士の情報共有です。浜松青年会議所には、全メンバーが、情報共有するためのツールは様々ありますが、活用できているでしょうか。理事会で採決され、実行される段階で、事業内容を知るメンバーが、ほとんどではないでしょうか。大事なことは、その事業が完成するまでの、議論の中にある情報を共有することではないでしょうか。そのために、今まで以上に、開かれた会議を運営していきます。
組織の信用は、浜松青年会議所の、事業価値に直結します。盤石な組織運営を通じて、浜松のまちとひとに、信頼される組織であり続けることが重要なのです。

70年という歴史を
温(たず)ね 今
新たな一歩を踏み出そう

2021年、浜松青年会議所は、設立70周年の節目を迎えます。この70年は、多くの先輩諸氏による、愛する浜松の為の、人づくり・まちづくりの歴史です。様々な事業や運動が展開され続け、そうした営みを礎に、今日の私たちの活動は成り立っています。
中国の古典「論語」に「温故知新」という言葉があります。故(ふる)きこと、すなわち歴史を学ぶことで、新たな道理を見出す。本年度は、この言葉の意味を、改めてかみしめる年としなければなりません。
コロナウィルスの蔓延により、日常社会の前提すら崩れてしまった今、私たちが見出すべき新しきことは、その「新しさ」の定義づけからも、考え直さねばならない難題と言えるでしょう。しかし、そんな難題に向き合ったときも、70年を数える浜松青年会議所の歴史は、きっと私たちに大きなヒントを与えてくれます。大事なのは、どういうことを行ってきたかという「手法」の問題ではなく、こうした難関な局面に、どう立ち向かったのかという「心意気」の問題なのです。これから、私たちが進むべき、浜松青年会議所の、新たな時代の運動指針を掲げ、大きな一歩を踏み出しましょう。
今この時代に、私たちJAYCEEが、胸に刻むべきことは何なのか。幾多の困難を乗り越えてきたであろう、先輩諸氏の軌跡を、メンバー全員で紐解き、「心ひとつに」運動を展開していきましょう。

今の世界が目指すべき
持続可能な社会

コロナウィルスがもたらした、新しい生活様式が求められる時代においても、指標が必要です。国連で採択された、17のゴールと169のターゲットで構成された、持続可能な開発目標「SDGs」は私たちの運動の、ぶれない方向性を担保する重要な指標となるでしょう。浜松青年会議所は、2021年もSDGsの推進を継続し、SDGsに沿った事業構築を行っていきます。「誰一人取り残さない」という思想を、すべての事業の共通指針とすることで浜松青年会議所の事業価値をさらに高めることに繋がります。

結びに

私たちは、「今」という瞬間を生きています。「過去」という時間の中で、様々な壁を乗り越えてきました。ひとつひとつの壁を乗り越えた時、そこには新たな景色が広がっていたはずです。その景色の先に見える、明るい光を追いかけることで「未来」へと進んでいくのです。
「限界突破」という言葉は、私たちが繰り返し行ってきたことなのです。
2021年、私たちの前に立ちはだかる壁は、いつもより少しだけ、高いものなのかもしれません。今までの日常を、見つめ直すという難題を前に、「心をひとつに」して望んでいきましょう。我々、浜松青年会議所の「友情」をもってすれば越えられない壁はないからです。壁の向こうに広がる景色は、今までよりも、可能性に満ち溢れた壮大な景色が待っているはずです。その景色に差し込む「未来」を想像すると、心が躍りだしませんか。
「限界突破」の信念のもと、新たな時代へ、心をひとつに、未来に繋がる確かな一歩を踏み出しましょう。